2012年4月23日月曜日

Commutative Weblog: 事件 アーカイブ


世を騒がせた元厚生官僚襲撃事件の犯人が自首してきた。Webニュースによると、「今から自首する」「34年前のあだ討ち」。小泉毅容疑者(46)が警視庁に出頭する約2時間前の11月22日午後7時すぎ、TBSのホームページに本人からとみられる書き込みが寄せられていたことが11月23日、分かった。「今回の決起は年金テロではなく、34年前に保健所に殺されたペットの仇討ちである」ということである。

TBSによると、書き込みは番組へ意見を寄せたり問い合わせたりするフォームで11月22日午後7時9分に送信された。差出人の氏名、問い合わせる番組名、件名を書く欄には、いずれも「元厚生次官宅襲撃事件」と記されていた。住所や年齢、メールアドレスは空欄だった。

小泉毅容疑者(46)の父親(77)は23日、山口県柳井市内の自宅で、「テレビの速報を見て、別人であってほしいと思っていた。まさかわが子がこんなことをするなんて……」とショックを受けた様子だったという。当然である。しかし、マスコミは、例の秋葉原無差別殺人事件のときも、犯人の父親に取材していたが、被害者を除けば一番のショックを受けている両親に取材するとは無神経ではないか。


正式に邪悪な行為は何ですか

父親によると、子供のころは友達付き合いも良く、明るい性格で、飼っていた犬をかわいがっていたという。地元の小中高校を卒業し、佐賀大学の理工学部電子工学科に現役入学。地方とはいえ、国立大学に現役合格というのは、それなりによい成績だったと推定される。しかし、単位がとれず留年を重ねて中退。東京のコンピューター関連の会社に就職したものの、2、3年で退職。その後、アルバイトを転々としたという。約13年前、地元に戻り、3年ほど働いたが、「インターネットでいい仕事が見つかった」と埼玉県に移った。その時から、約10年間、音信不通だったという。

父親は「息子には自分で腹を切れ、のうのうと生きているなと言ってやりたい。遺族に対しては、何とも申し上げようがない。私の命をささげたいくらいです」と肩を落としていた。「腹を切れ」という言い方に、倒幕の中心であった長州藩、山口らしい古武士の雰囲気を感じる。さぞかし立派な父親であると思われる。よく、世間では、子供が事件などで問題を起こすと、その父親なり母親に問題があったのではないかと安易に追求するが、その因果関係は難しくて、それは必ずしもそうとは限らない。


悪いウィル

私が大学のときも、単位がとれず退学処分になった知人は何人かいた。それでも、それなりに社会人としてちゃんと生きている。そういう知人たちは当然に警察沙汰になっていないが、しかし、小泉毅容疑者との本質的な違いはなんなんだろう。

小泉容疑者のその後判明した経緯は次のとおりである。

- クレイマーであった。近隣の建設工事現場の騒音をめぐり、建設業者との間でトラブルを起こしていたことが23日、埼玉県警の調べで分かった。県警によると、4年前の2004年春、小泉容疑者が「工事の騒音がうるさい」と、住居付近で建設工事をしている業者に執拗にクレームを付けた。問題が収まらなかったため、業者側は県警大宮署に相談。これは県警が仲裁し、双方納得の上、和解した。

- 小泉容疑者は取り調べに対し、「以前飼っていたペットを保健所に殺され腹が立った」「大学に行き、高級官僚が悪だと分かった」などと話しているという。

実は私も、小学校のとき、折角貰って可愛がっていた犬を、学校に行っている間に祖母に捨てられて大層腹が立ち、祖母の部屋に何か投げつけたのを覚えている。確かにそれは愉快な記憶ではないが、いまさら蒸し返して立腹するようなものでもない。その後の人生でいろいろなことが人並みに沢山あったからである。


ときに最初の世界戦争が始まった

また、「高級官僚が悪だと分かった」というのも、心情的には分かるが、しかし、世の中の悪は、全然高級官僚に限定されない。むしろ、高級官僚は、一応のルールに則っているので、まだましな方である。

それでも私はまだ、真犯人は別にいるのではないか、という疑いが晴れなかった。というのは、本当に山口さん夫妻に恨みがある人がいて、その犯人と小泉容疑者が知り合いで、いくらかの報酬と引換えに小泉容疑者が代理で犯人として名乗り出た、というものである。もともと、小泉容疑者は、世を捨てたような状態であり、一種の自暴自棄とみなすこともできる。

しかし、捜査本部によると、11月22日夜、警視庁本部に出頭した際に乗っていたレンタカーの軽乗用車の後部座席に血が付着したナイフがあったほか、吉原さんあて伝票と段ボール箱2個、サバイバルナイフ数本、リュックサック1個、手袋、運動靴2~3足があった。1足は中野事件の現場の足跡と模様がよく似ているという。こういう物証があると、流石に動かないか。

こうしていよいよ、小泉容疑者は、妄想狂だということになる。年金制度の矛盾に対する義憤でもなんでもない、34年前の飼い犬のことが原因なら、完全に妥当性を欠く判断をしていて、単なる凶暴な狂人というだけのこととなる。依然として、元厚生官僚に着目するというのはどうしても解せないが。


私の経験だと、重大性の認識の錯誤が起きるのは、人格障害ではないか、と思う。というのは、ある種の人格障害では、とてもどうでもいいことに激怒したりする。そして、自分で自分にねじを巻いて、エスカレートしていく。逆に、とても重要なことに平然としていたりする。

ただ、これ以上は、最早ニュース性はないのではないか。世知辛い世の中で、1つの話題を提供したということと、あと、私は、宅急便が届いたとき、玄関のドアを開けるのが、以前よりも少しだけ慎重になった、それが私がこの事件から受けた影響である。



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